2022 / 2 / 19



ウランは、香川県の田舎の、
うどん屋の隣にある三木高校に通っていた。
うどんと同じくらい、特殊能力、UFO、宇宙人などの超常現象が、
日常の一部となっている現代香川の高校生という空間で、
ウランもまた、毎日うどんを食べ、時々恋をしたり、失恋したり、
土曜の昼はうどんを食べ、ゲームをしたり、
日曜の昼はうどんを食べ、宮脇書店へ行ったり、

だから、まるでうどんを食べるように当たり前に、
セーラ服みたいな女の服をウランが着ていても、
誰も気にしない。

おい、ウラン、2組のあやちゃんが見つけたエイリアン見に行こうぜ
おい、ウラン、こないだ死んだじいちゃんが生き返ったんだよ

ウランのことを馴れ馴れしくウランと呼ぶ、
うどん屋の息子の、幼馴染のたけしのことを、
ウランは幼稚園の頃からずっと好きだった。

けれど、高2になって、たけしは、バイト先で知り合った2個上の
大学生のクソ女とセックスして以来、ウランとは遊ばなくなったから
ウランもやがて高校には行かなくなり、
毎日、昼間からベルシティーをうろついたり、
山でスマホでエロ動画見て一人でシコッたり、

いつまで、ガキやってんだよ、俺
もっとデカイことやりてぇんだよ、俺
たけしのことなんかどうでもいいんだよ、俺
たけしなんかより、何倍もデカイやつと
死ぬほどセックスしてえんだよ、俺

そんなことをぶつぶつ言いながら、
ついに1日に108回シコッた雨の降りしきる夏の夜、
ウランは、東京の音楽事務所が募集していたとある企みを、
ずぶ濡れになったまま入ったコンビニの壁のチラシで知り
もはや雨水なのか精液なのか分からない濡れた手で
スマホを取り出して、衝動的に東京行きの飛行機を予約した。

彼の名は、浦島 涙。17歳。

しかし、まだ誰も彼の本当の名を知らない。
彼自身さえも。


とある時代、魔王が復活した衝撃によって、
ある時代のアアグウアと、今から17年前の香川県三木町とが、
まるで1本の太いうどんのような
時空を貫くワームホールによって繋がった。

ウラン。
浦島 涙。

またの名を、ウラ・ナピシュティム

好きなこと、セーラ服を着てシコる。




戻らない!!!!!





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第2話 ウラン