（異なる筆跡のメモが残されている）


二回戦にてNo.99の死亡を確認
前回は何らかのトリックで免れたようだが、今度こそ間違いない
遺体をこちらで処理してから本部に報告書を送る

ようやくこれであの男ともお別れだ
奴の訳の分からないしぶとさのせいで随分と無駄に苦労させられた
組織に必要なのは、事が済めばさっさと死んでくれる者なのだ
今夜は枕を高くして眠れる



……………

………

…




「危ないところだった。とっさに浪漫死阿の術を試さなければ死んでいたな」





◆ ◆ ◆ ◆


（残されたメモ）

今回は無所属という扱いではあるが、大まかなチーム分けはあるようだ リージョンと呼称されるらしい
複数人で戦闘を行う以上、多少は面子を知っておかねばならないかもしれない
所属先はﾌｫｰﾘﾝｸﾞﾗﾌﾞ　ふざけた名だ

同チーム内に応援人という存在がある事を知る
事前に顔を合わせておいた
Kちゃんちに行きたかったらKちゃんのお母さんに聞いてねとの事だった
同じ陣営とはいえやや警戒心に欠ける

ピッカと名乗る少女と顔合わせした
海岸に流れ着いたという忍者を従えていた。どうやら漂着物で生計を立てているようだ
幼く見えるがサバイバル能力が高い　評価すべき点だろう
再度見かけた際にバザーに人間を出品していた　人身売買組織と関与しているのかもしれない

トルーノワールという者が訪ねてきた
本名とは思えないので自分と同様コードネームか何かだろう
妹を探しているらしく、お前の妹は知らないと伝えておいた
便利屋は人探しの依頼も受け付けはするだろうが、表の世界の探偵を頼った方が無難だろう

ディムネルX7なる者と会話した
ただならぬ気配を纏っている男だ。かなりの手練れに違いない
並行世界や未来がどうのと言っていたが、自分には此処の今しか分からない…
額の4が気になったが、聞く機会を逃した

樹木子ニレとその父ダイコクが来訪した
人間ではなく妖怪らしい。会話ができればさほど不自由は無いと感じた
ダイコクはどう見てもイタチなのだが、二人（一人と一匹）の振る舞いは親子のそれだった
好事家が好みそうな毛並みだったため、父の毛皮を狙われぬように注意した方が良いと伝えておいた

24cellと名乗る者が現れた
本人曰く宇宙人らしい。ここには何でもいるのか
宇宙とは空の更に果ての事だ　そこに人間が住まうのは物語だけだと思っていた
作戦を練るのが得意らしいので、同じ場に居合わせたなら世話になるかもしれない
かなり奇妙な服装だったが宇宙ではそういった服が必要なのだろう

ヌリカという女性を訪ねた
ぬりかべ族らしい。東洋の妖怪にそのような名前もあった気がするが関係性は不明
大人のふりかけを多用しすぎて髪が蛇になったそうだ
言っている意味は分からないが、強力な蛇を使役できるなら俺もそのふりかけを使いたい

ラヴィーと名乗る者と出会った
一見少女だがその言動からはやや不穏当さを感じる
捜査がどうのと言っていたので、どこかの軍部警察などの所属かもしれない
それならば無骨な重火器を所持しているのも納得がいく

石井いしという者が来た
石投げ士をしているらしい。
素朴な印象を受けてしまうが投石は古来から人類に備わる強力な攻撃手段だ
それに特化した技術ならばその力量は予想を遥かに超えるかもしれない
しかし石を忘れたらしい。その辺りに落ちているものでは駄目なのだろうか

デブリ＝アッシュベリーが来訪した
一息で自身の生い立ちを話す男だ　なかなか過酷な経歴らしい
一回戦で脱落していたはずが、どういう訳か復帰している　
どうやら同リージョンのぬかどこの補助を受けたようだ　ぬかどこは共闘した相手でもある
「俺の命なんてクズだ」と連呼していたのはそういう事か
しかしクズと言うには惜しい人材（人材と言っていいかは不明）だったので、ぬかどこを召喚できるならしろと言っておいた

ふわうさちゃんがやって来た
ちゃんまで含めて名前なのかそうではないのか、判別がつかない
同居人に銃を取り上げられてしまったらしい。この戦いの場でそれは過酷な仕打ちに思える
だが素手でも勝ち抜いているようなのでさほど問題がないのかもしれない
ある種の達人は状況も得物も選ばないものだ

南の空に凶星が浮かんでいた
それはまるで瞳であり、不吉を予感させるものだった
俺とて自分の終わりが幸福なものになるとは思っていない
しかし抵抗する意志は捨てないつもりだ　そのための開運グッズでもある

水槽の覇者と会った
よく分からない…が、かなり古くから存在する水槽のようだ
俺に霊感はないはずだが、何か怨念のようなものを感じる
自分には知り得ない何か深い謂れがあるのかもしれない



◆ ◆ ◆ ◆


バザーが開けるとの事だったので開いた。商売の経験は無い
予備のナイフを出品したところ、去年のチームリーダーが買っていった
刃物に関心があるのだろうか

バザーの継続許可を得た　待ち時間の金策に良いかもしれない
昔業者から買ったペンダントを出品する
なんでも持ち主に幸運を呼び込む宝玉が埋め込まれているらしい
残念ながらその宝玉はもう粉々に砕けてしまっている　これのお陰で以前命拾いしたのだ
それはさておき、程なくしてまた去年のチームリーダーが買っていった
さすがに不審な点を感じる　今回無所属で参加した自分への警告かもしれない
とはいえ敵陣営ではないので問題ないだろう

三品目出品の許可を得た　しかしそろそろめぼしい物が無い
昔幼馴染らしき男から購入した壺を思い切って出す　美術品としても価値が高く、持っているだけで金運が上がるそうだ
残念ながら今は粉々に砕けてしまっているが、これが無ければ自分はとうにこの世にいなかっただろう
そして出品して少し離席している間にまたしても去年のチームリーダーが買っていった
いくら何でもおかしい　何らかのメッセージだろうか
快楽殺人鬼だと聞いていたが、どこかの組織に属している可能性も捨てきれない

更に出品許可を得た　売れた際の利益に釣られて手を出したものの、出せる商品のあては無い
仕方ないので昔の仕事着を出した　幸運を呼ぶ絹糸と特殊繊維が編み込まれており、丈夫で内側の刺繍により風水も良いらしい
何度も命を救ってくれた思い入れのある服だが、かなり傷んできたので最近新しい装備に変えた
さすがに高額故にしばらく売れなかったが、夕食の支度をしている間にまた例の女が買っていった
少し考えた　俺は意図せずして自分の装備品をあの女に渡し続けているのではないか？
つまり奴はやろうと思えば、火竜の尾のNo.99に成り代わることが可能になっている
あの女の目的が見えてきた

5つ目出品の許可を得た　この辺りになると許可を得るだけでも相当な出費だ
もう何も無いので昔の手記を出した　風水的に金運がアップするカバーを巻いてはいるが、俺の命と引き換えに穴が空いている
しかしこれには俺の今までの依頼の全てが記録されている　火竜の尾に興味がある者ならば価値があるかもしれない
さすがに金額的に誰も買わないとは思うが
上記の文章を書いてから十分足らずであの女が買っていった
間違いない　奴はNo.99になろうとしている
随分と悠長なのは自信の表れか　いよいよ年貢の納め時というやつなのかもしれない

辛くも死を逃れた後、不思議なことに俺の借金総額がやや減っていた
誰かが一部を負担したのだろうか　奇特な人間もいたものだ
俺の持つ幸運の一部でも分けれるものなら分けてあげたいところだ


◆ ◆ ◆ ◆


手持ちに多少余裕が生まれたのでバザーを利用する事にした
縁起の良さそうな物を探しているが、案外見つからない

一回戦で世話になったニレの保存食を買った。何の肉か分からないが食えなくはないだろう　トマトジュースは美味かった
向こうの出方を窺う意味でラドワのタロットカードを買った。無駄に出費した気もする　ちなみにタロットは分からない
何となしにふわふわ蒸気機関いぬのなんでもお手伝券を買った。何でもやりますと意気込んでいた。今度依頼を手伝わせても良いかもしれない
色欲の魔法少女のオーダーメイド権を買った　特注のアミュレットを製作してもらえるそうだ　借金が帳消しになるほどの金運を得られるように頼んだ
後ほど届けてもらった　相応の値段がする分効果も高いに違いない
ラララルラの祝福を買った　天使の祝福というのだから縁起が良いのは間違いない
購入後に何故か死にかけたような記憶があるがよく覚えていない
ピッカの拾ったという青真珠を買った　効能は分からないが、真珠もパワーストーンに分類されるはずだ
何かしらの開運効果が期待できるだろう