「わたしはニーシャ・オブライエン。
　わたしはソニア・ゴールデンスタイン。
　わたしはナナミ。B-73
　わたしは……全てを欺き、侵入する卑しいウサギ」

「今は彼女らと共にこの雨を見ている」

「すべてを洗い流し」

「穢れに満ちた躰さえも清潔にしてくれる」

「……そんな錯覚を覚えるような、雨を」



「…………何を"期待"している？」

「そうだな……特にないが、強いて言えば……」



「──あの時は、さも忘却していたかのように振る舞ってはいたが」






「このわたしが忘れると、本当に思っていたのか？」





「あの残光は今でもこの網膜に焼き付いている。
喩え"星《おまえ》"が落ちたとしても、今もなおあの空の上で明滅している」


「……決して晴れない、あの鈍色の雲の上で」


「わたしはきっと、それが見たくて此処に居るんだ」


だが　雨はあがらなかった。