「大佐が行方不明のまマなンだ、なら——

　　　　　　　　　　　彼女達に手を貸すノハ満更でモなイのサ」










「で、ダ」

……宇宙まで旅するとは、誰に似ただろうか？
自分の故郷のある数え歌にこんなものがある。

『ひとつ星を数えたら　ふたつ瞬く流れ星
　みっつ分かれた流星群　よっつに増えて星降る夜
　いつつの船が宇宙（そら）を飛び　銀河の旅人ひた走る』

星をも喰らう勢いで今回は——先の件でああだこうだと巻き込まれた以上
或いは、巻き込まれにいった以上……自分の本来の上司、マグナス大佐の行方不明の事は
敢えて目を瞑るべきなのかもしれない。……今は中央政府軍の軍人であって、
*科学技術魔法国家の**統一軍の軍人ではない。少なくとも、魂の概念上はそのようになっている。

竜子の話に乗って飛び出して、彼女についていくホーリーに顔色が悪いと心配され、
星詠みの姉妹は割り切ったように澄ました顔。宝球は何も応えはしないが、望むものは手に渡ってくる。
ある意味、今の時間は「ゾンビ軍人・軍人ゾンビ」もただの「苦労人」になり得るだろうか？

それすら自惚れだと思うまでに、腐敗した脳細胞が反応するのもまま遅く。
ビブラティオ軍医准将が憲兵に引き渡される合間合間に思考は次へ次へと巡って行く。
暗黒剣士という肩書きは、レシプロ機に載って黄昏色の空を飛んだ英雄には少々重たいと思っていたし
屍重奏旅団を率いた実績は、或いはそういった活躍が今後も続くかも分からないと考えた。


「——ワタシはゾンビだ。だかラ、それらシク戦う。ずっとそうだったしナ」


准将が恐らく得ていた永久雇用の書類は、本物だったと思う。
と、同時に、偽物でもある。　死して屍なお死せず。魂までは死ねぬ。

ツェリやローズ、モジャ達を想う。肩を並べた戦士達はいつまでも戦友（とも）だ。
個人的見解として、阻止する計画が動くならばそれでよくて。
結局の所、自分はどこかこの状況だ戦況だを楽しんでいるのだと思う。
軍人とはそういうもので、故郷で平和に過ごす妹と弟が居るから無茶もできる。
守るべきものがあれば、人は戦える……それが星々を喰らう程の爆発でも。


ロケット砲を担ぎ直した。


やる事はシンプルだ。星を喰う。
大佐が行方不明となった魔法剣の波も、そして戦いを求める戦士も。
運命（そうなるべきだったという流れ）も、星（そうあるべきだったという形）も、喰らってやる。


*オチキス少尉（ガーネット・オルトチーキス・ヘイズ）が本来住む果ての未来の世界にある国家。
性質上、ありとあらゆる技術魔術人種等が流れ着く世界。地球の辿る終着駅にして『エンドコンテンツ』と謂われる。

**陸軍、海軍、空軍、宇宙軍……膨大に膨れ上がった軍の分類を統一し、統一軍と銘打つ事で各部門の連携を高めている軍の総称。
『科学技術魔法国家』だけが現状はこの体制を取っているが、内部的には当時の名残が随所に見受けられている。
因みに、オチキス少尉は空軍所属。戦闘機乗りとして『紅空の英雄』と謂われるほどのエースだった。