雨も晴れも、何処かで乞われるもの。
雨が降れば、大地は潤い、そして晴れれば、命が育まれる。

しかしどちらかに偏れば…
増え過ぎた水は全てを押し流し…強い日差しは大地を枯らしてしまう。

それは何処にでもある人形だった。
軒先に吊るして、晴れを願う為の人形だった。

しかしある村では、■■を吊るした。
雨と晴れ、二つを願う為に。

吊るされた■■は、雨を呼び、大地を潤し。
そして晴れを呼び、命を育んだ。

時は流れ、■■は吊らなくなったけれど。
その村で作られる首吊り人形は、必ず雨と晴れの両方を呼んだ。

軒先に吊るされた人形は、大量の雨を降らし、程なくして晴れを呼ぶ。
人はその人形を、『俄雨（チェンユイ）』と呼ぶようになった。

此処に居るのはその1人。
軒先に吊るされる首吊り人形の1人。
かつて村で吊るされた■■の意思を継ぐもの。
名は『俄雨（チェンユイ）』。

―晴れを願う者
―嘯く者
―大切な人に想いを寄せる者
―罪を背負って歩き続ける者

此度は祭りの場なれども
彼らと雨を降らせるのも悪くはない。

人形も共に歩いていく。
手にした傘の下に掛かる、七色の橋を夢見て。









―――しかし雨は、あがらなかった。

雨に濡れ。赤に汚れ。
地に落ちて。土に塗れ。

次なる雨を呼ぶ日まで。
首吊り人形は吊るされ続ける。