─血がこびりついた剣の話─

彼女は冒険者を夢見る、優れた剣の使い手だった。幼馴染の気弱な少年をお供に近隣を探検しては、闇を切り裂く一閃で人々に仇なすモノを切り伏せていた。
そして生まれつき体が弱く、遠くまで出歩くことができない双子の弟に自らの(多少の自画自賛と誇張が成された)冒険譚を語り、勇気づかせるのが好きだった。
ドキドキワクワクする冒険の果て。イケメンの旦那と、この世のどこかにある万病に効く薬を手に入れる──
そのまま成長すれば、いずれ夢は叶っただろう。

「アレには参りました。距離を空けても一気に間合いを詰めて来て……。なので、予め拉致してきた弟を盾にしたんですよ。あとはご想像通り」

「生まれる時が一緒なら死ぬ時も一緒。僕には血を分けた兄弟というものがいませんが、そういうものではないかと考えたんです」

「この剣、オススメですよ。人間2人を一気に突き刺しても変わらない切れ味！でも血がこびりついていて洗っても取れないので、お安くしておきます」