ID:659

3 11

《◆確定4》

生い立ち:以呂波坂家十女ヌ。武器はfalse bullet。false bulletは伝説だった。駆使する弾丸の名前が、そのままあいつの名前になった。弾丸の性質と同じように、存在のはっきりしない胡乱なやつだった。時代の転換期に颯爽と現れては得意の弾丸で標的を撃滅する、都市伝説みたいな存在を地でやっていた。マア、世間の印象とは反してどんくさい一面もあったが。よく忘れ物をした。駅員に「マフラーの遺失物ありませんか？」とペコペコする姿は笑っちまった。想像できるか？　滑稽だろ。そんなもんさ。なんで知ってるのかって？　サア、なんも知らんよ。あいつのことはあいつ自身だってわかってないんじゃねえのかな。あんたは自分が何者なのか知ってるかい？　私は一族の失敗作だった。あいつに「撃て」といわれて年代物の銃を握らされただけさ。引鉄を引けば弾丸が出る、ふつうの銃とまったく同じ。この銃でいくつもの伝説的な偉業が為されただなんて信じられん。遣い手が違うんだろうナア。あんなぼけーっとしたやつがナア。あいつに関する事柄は「ぜんぶ夢だった」っていわれても納得しちまうよ。そっちのほうがしっくりくるぐらいだ。だがこの手にはあいつの持っていた銃がある。昔はfalse bulletを装填できる銃もそれなりの数あったらしいが、今や製造も修理もしちゃいねえ。銀弾だって近代化の煽りを受けて鼻糞同然の価値に堕ちたんだから当然だ。時代は変わった。現役で残存するのはこいつ一挺だけだろうな。珍品だ。あんたもfalse bulletのファンのクチなんだろ？　触ってみなよ。アア、いいからいいから。銃に触るのは初めてかい。引鉄に指をかけな。セーフティなんて高等なもんはこいつにゃない。銃身を逸らすな、照準は私に向けておけ。false bulletを一発籠めてある。信じるか？　人差し指を曲げてみな。ホラ。感触はあるかい？　確かに撃針は雷管を叩いたんだ、今。私はfalse bulletを籠めたし、あんたは引鉄を引いたが、false bulletは発射しない。撃てねえんだよ。不思議だろ、まるで手品だ。あいつは「事象を紐解く」とかいってたが、難しいことは私にはさっぱりわからんよ。あんたは私より学がありそうだ、どう思う？　ンン？　撃てたら？　弾丸が出たらどうしてたのかって？　そしたら銃は進呈だナア。遣い手が見つかったことになるわけだし。万歳、万歳、万々歳。そういうことで、銃は返してもらうよ。まだ私が使わないといけないみたいだからな。また戦いが始まるんだ。あっちこっちで。終わっても次が。そのまた次が列になって押し寄せてくる。あいつもこんなんだったのかね。アー、そうか、私がfalse bulletを殺したんじゃないかと疑ってるのか。話の流れなら、そうなるな。あいつを撃てるものなら撃ってみたいが。幸か不幸か、私はあいつを撃ってない。こんな酔狂をするのは私ひとりでじゅうぶんだ。撃ったのは薪だよ。その薪でマシュマロを焼いて食べた。false bulletは冷酷な殺戮兵器じゃない。青くさい願いだ。一人前になれなかった大人が引き摺る罪科だ。false bulletがfalse bulletの名を下したとき、それは祝福になるのかな。今一度逢いたいものだが、どこでなにをしているやら。その辺の自販機で珈琲を押したつもりが御汁粉出してたりしてな。

(登録:2021-12-26<4> / 更新:2022-01-25 13:48)

ID:346

6 20

《◆確定2》

生い立ち:以呂波坂家九女リ。楽器はサグラダ・ファミリア。普段聞く音楽はゴスペル系。姉妹でいちばん父親似。千鳥のことを「物騒だなー」と思っている。羽は機械仕掛け。人力。限界滞空時間は４分。

(登録:2021-12-13<2> / 更新:2021-12-29 17:31)